2007年08月15日

炎は麻帆良の地に踊る 第十五話

SIDE 陸斗


トゥルルルル、トゥルルルル、トゥルルルル

………なんだ?こんな朝っぱらから。
時計を見るとまだ六時半だった。
なんなんだよ、とぼやきながら電話を取る。

「はい、もしもし、楠ですが」

「おお、楠君か、ワシじゃ」

────それはやっぱりろくでもない電話だった。




炎は麻帆良の地に踊る  第十五話



「俺の知り合いにワシさんなんて知り合いはいません。番号を再度ご確認の上、おかけ直し下さい」

ガチャ

ふう、さて二度寝二度寝。


トゥルルルル、トゥルルルル


あ〜!うるせー!

「はい、もしもし」

「ワシじゃよワシ。近右───」

「ウチには他所に振り込むほどお金はありません。振り込め詐欺なら他をあたって下さい」

ガチャ

やれやれ、これでゆっくり寝れ───


トゥルルルル、トゥルルルル


あー、もう!なんなんだよ!俺は眠いんだよ!

「はい、どちらさん!?」

「じゃから麻帆良学園長の近衛近右衛門じゃよ!頼むから今度は切らんでくれよ」

受話器から聞こえてきたのは泣きそうな学園長の声だった。
顔文字にしたら (T-T)  こんな感じだろうか?

「ああ、さっきからのイタ電は学園長だったんすか。なんなんですか?こんな朝っぱらから」

「イタ電って………ま、まぁそれはよい。実は例の修学旅行の件なんじゃが」

「なんかあったんすか?」

まぁ人の安眠を妨害しておいて何も無いなんてほざいた日にゃ、学園長室を灰にしてやるがな。

「実は夕べ遅く、木乃香が呪術協会の手のものに誘拐されそうになったらしいのじゃ」

このかちゃんが誘拐未遂?

「幸い刹那君とネギ君、それからアスナちゃんのおかげで無事助け出したのじゃが」

「アスナ?」

って誰だっけ?

「ネギ君と一緒にいる髪を左右で縛っている女の子じゃよ」

………ああ、あの生意気な暴走少女!って、待てよ?

「なんであの子が?」

「アスナちゃんはネギ君と仮契約しとるんじゃよ。じゃから魔法使いの事も知っておる」

「へ〜、あの子がね〜」

「うむ。それでじゃな。以前お願いしたようにこれから向こうに行って欲しいんじゃ。
流石にそこまでされては黙っておるわけにはいくまい」

「でも、助け出したんでしょ?なら大丈夫なんじゃないですか?」

桜咲もいるんだし。

「それがじゃの。その時三人ほど敵がいたらしいのじゃが、その中の一人がかなりの使い手らしくての。
刹那君が珍しく弱気になっておるのじゃ。もし戦闘になったら自分では勝てるかどうかわからないと言っておった」

あの桜咲が?おいおい、一体どんな奴だよ。

「………分かりました。それじゃこれから京都に向かいます」

「よろしく頼むぞい。ああ、それとお金を渡すから一度学園長室へ寄ってくれんか?」

「分かりました」

ガチャ

やれやれ、俺の願いは一日しかもたねーのかよ。



居間に行くといい匂いが漂っていた。

「おはようございます、陸斗様」

「おはようございます、操さん」

折角の朝食だが食べてる暇は無いな、操さんには申し訳ないが。

「すいません、操さん。さっき学園長から連絡があって、これから京都へ行く事になりました」

「では向こうでなにか?」

「ええ、ほら、例の学園長のお孫さん。彼女が誘拐されそうになったらしいです」

「まぁ」

口に手をあてて驚いている。

「そんなわけですいませんが、朝食を食べてる時間が無いんです。すぐに出なきゃならないんで」

「そうですか。それなら仕方ありませんね」

そうは言ってるが少し残念そうだ。

「じゃ、これから着替えてすぐに出ます」

「お支度をお手伝いします」

「ありがとうございます」

二人で準備したのですぐに用意できた。

「それじゃ行って来ます」

「あ、陸斗様、待ってください」

操さんが小さな包みを持ってきた。

「あの、これ、おにぎりと朝食のおかずを包んだものです」

「ああ、ありがとうございます。助かります」

やはり買って食べるより操さんのお弁当の方がうまいからな。

「それじゃ、改めて行ってきます」

「いってらっしゃいませ。御武運を」

カチッ カチッ

火打石を打ってくれた。なんだか昔の武士みたいだ。



てなわけで学園町室前。

コンコン

「楠です」

「入りなさい」

学園長室に入ると学園長だけだった。

「ふむ、朝から済まんの。なにせ刹那君から連絡を受けたのが夕べ遅くじゃったのでな」

「いえ、それはいいですけど。それで俺はどこへ行けば?」

確か連中の行き先は京都と奈良。一昔前の定番だ。定番ゆえに観光場所には事欠かない。

「今日は奈良で班別行動のはずじゃ。細かい場所は後で刹那君に電話して聞くと良い」

そう言って桜咲の電話番号のメモと紙幣の入った封筒を渡してきた。

「それからこの他に必要なものがあったら麻帆良学園に請求するようにしてくれればこちらで処理しておこう」

「分かりました」

でも他に必要なものといっても……あ。

「それってどんなものでもいいんですか?」

「楠君が必要だと思えばな」

ならば、今までの迷惑料として───ふふふ。
携帯を取り出す。


トゥルルル、トゥルルル、


『もしもし、陸斗?』

「ああ、おはよう真」

『……なんだよ、こんな朝っぱらから』

「悪いな。実は俺京都へ行く事になっちまってな」

『向こうでなんかあったのか?』

「ああ、それでお前謹製の転移魔法符をくれ」

『何?ありゃ俺の小遣い稼ぎに──』

「分かってるよ。ちゃんと金も払う」

『それなら別にいいけどよ』

「なんで学食はもういいから友人価格で頼む」

『何?…わかったよ。じゃあ、一割引でどうだ?』

「半額!」

『お前は俺に死ねと言ってるのか?二割だな』

「そこはお前、これから危険な仕事をしに行く友人を慮ってだな、四割くらいで」

『ああもう、わかったよ。それなら三割引でどうだ?』

「その辺が妥当か。それでいいぞ。それじゃ長距離用を十枚と近距離用を五枚。金は学園長から必要経費としてもらってくれ」

チラリと学園長を盗み見ると青い顔をしていた。

「それじゃ今から取りに行くから」

『りょーかい。用意しとく』

ピッ

「それじゃ学園長、支払いの方、よろしくお願いしますね」

最大級の笑顔で言ってやった。

「く、楠君。龍宮君の転移魔法符って………」

「遠距離用が一枚百万、近距離用が一枚八十万ですが、今回はそれぞれ三割引でいいそうです」

しめて九百八十万円也。あいつの魔法符は出来がいいんでまほネットでは結構いい値で取引されているらしい。

「し、しずな君になんて言い訳をしたらいいんじゃ………」

なんか学園長がブツブツと呟いているがまぁ大丈夫だろう。

「それから学園長、俺の宿泊先はどこですか?」

まさか野宿させるつもりなわけじゃあるまい。

「あ、ああ。宿は3−Aの子達と同じ旅館じゃ」

そう言って宿の地図と俺が泊まる予定の部屋番号が書かれた紙をくれた。

「大丈夫かな?結構顔見知り多いですよ、俺」

「もし見つかったら、適当に言い訳しておいてくれ。学校の方は公欠扱いにしておくから」

「分かりました。何か考えておきます。ああ、魔法の事を知ってる連中には話してもいいですよね」

「それは構わんが、このかには出来れば知られんように頼む。ワシはいいのじゃがアレの親の方針での。
魔法の事は知らせておらんのじゃよ。昨日の事は夢か何かと思っとるようじゃし」

「了解です。それじゃ俺はこれで。しずな先生への言い訳、しっかり考えておいてくださいね〜」

俺の言葉を聞いて再び顔を蒼褪めさせた学園長を残して、俺は学園長室を出た。



「悪かったな、朝早く」

「いや、それは大丈夫だけどよ」

龍宮神社に着くと、真が境内の掃除をしながら俺を待っていた。

「ほれ、魔法符。遣い方は覚えてるよな?」

「ああ、確か近距離用は500メートル以内の見える範囲、遠距離は対になってる小さい札に転移するんだったよな」

「ああ、まぁ厳密には近距離用は正確に転移場所のイメージが出来てれば大丈夫なんだが、
目に見えてるところなら確実だからな。見えないところに転移する場合は気をつけろよ」

「りょーかい」

魔法符を懐にしまう。

「そんじゃ行ってくる」

「ああ、気をつけてな」

それだけ言って、駅に向かった。



龍宮神社を出て暫くしてから、まだ桜咲に連絡してない事に気付いた。
駅に着くまでまだ時間があるから電話しておくか。


トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル


『──もしもし、桜咲ですが』

「もしもし、楠だが」

『楠さんですか?』

「ああ、さっき学園長から話を聞いてな。これからそっちに向かう事になった」

『そうですか。お手数をおかけしますが、よろしくお願いします』

「いいって。元々そういう話だったしな」

『有難う御座います』

一々律儀な奴だな、全く。まぁ性格なんだろうが、疲れないのかねぇ。

「それで今日はお前らはどこに行くんだ?」

『あ、今日は奈良公園で班別行動です』

奈良公園か。人が多い分、気をつけないといけないな。

「そうか。多分俺がそっちにつくのは昼過ぎから夕方になる前くらいになると思うから」

『分かりました。今日は京都ではありませんし、大丈夫だとは思いますが』

「それでも一応用心しておけよ。それと俺も同じ旅館に泊まるから、そっちに合流するのは旅館についてからだ」

『え?奈良公園では合流しないんですか?』

「ああ、どこに監視がいるか分からんからな。奈良公園には一応行くけど、俺を見ても無視しろよ。
お前だってクラスメートと一緒に回ってるんだろ?俺と合流すると色々勘ぐられるだろうからな」

『……成る程、そうですね。分かりました』

「それじゃそろそろ駅に着くからこれで切るな。また奈良についたら連絡する」

『分かりました。それでは失礼します』

ピッ

さて、それじゃいっちょ気合入れていきますか!



SIDE 刹那

電話を切ってポケットにしまう。
これであの少年が来ても対処できるだろう。私ではあの少年に対抗できるか分からないが、楠さんならばあるいは───。
そう考えてから前を向くと何時の間にか楓が立っていた。

「どうした、楓?」

「今の電話、陸斗殿でござるか?」

「盗み聞きか?あまりいい趣味とは言えんぞ」

「何、たまたま聞こえてきただけでござるよ」

悪びれた様子も無く言い返してくる。

「それで、何時の間に陸斗殿と知り合いになったのでござる?」

その質問に一瞬戸惑ったが、楓ならば教えても問題ないだろうと思ったので簡単に説明する事にした。

「今回の修学旅行で、お嬢様の護衛とネギ先生の補佐を学園長が楠さんに依頼してな。
その関係で先日紹介してもらったんだ」

「そうでござったか。ならば先ほどの電話は──」

「ああ、これから来てくれる事になった。ただ、奈良公園では合流はしないんだがな」

「何故でござるか?」

「実は昨日、お嬢様が攫われそうになったんだ。なんとか助ける事が出来たんだが、顔が割れてしまってな」

「成る程。それで助っ人が合流した事を知られないように、という事でござるか」

「そういうことだ」

そこで楓はふと考え込むようなしぐさをした後

「それでは拙者が迎えに行くでござるよ」

「何?」

「いや、なに、流石に陸斗殿を一人で放っておくのは可哀想でござるからな」

わずかに目線を逸らせながらぽりぽりと頬を掻いている。

「それはありがたいが、どうしたんだ?」

「い、いや、陸斗殿も拙者と同じ散歩部で、いわば校外活動とでも言うか………」

?いつになく歯切れが悪いな。……まぁ迎えに行って貰ったほうが楠さんにも都合がいいだろう。

「分かった、ならば頼む。詳しい時間は分からんが、昼過ぎから夕方くらいには着くらしい。
こちらに着いたら一度連絡をくれるそうだ」

「了解でござる」

それだけ言って楓は去っていった。最後はいやに上機嫌だったが一体どうしたんだろうか?

「まぁいいか。折角出迎えを買って出てくれたんだ」

楓なら滅多な事は起こらないだろうし、大丈夫だろう。
私も早く準備を済ませて神楽坂さんと合流しよう。



posted by 焼き饅頭 at 21:28| Comment(1) | TrackBack(0) | 炎は麻帆良の地に踊る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 どうも〜、ほっぺにキスした後口笛を吹きます、谷山・・・じゃなくて、ノッティーです〜。
 最新話読みました。いよいよ陸斗が京都入りですね。女の戦いが始まりそうな予感。楓の参戦がどのような展開に発展するのか楽しみです。スペック的にいけば千鶴、アキラなんかも張り合えそうですね。全員巨乳!!最高〜!
 話は変わりますが君のぞ、私の一番好きな回はリクエストオブJOYトイのところですね。JOYさんが追い詰められる感じがすごく好きです。智秋さんは確かに関さんに弱いですよね。ドッキリの時借りられてきた犬みたいな感じになってましたからね。画伯としては健在でしたが。
 とまぁ、こんな感じで、続き頑張ってください。ジューシーポーリーBYE〜V(^-^)V
Posted by ノッティー at 2007年08月16日 02:11
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