2007年10月01日

炎は麻帆良の地に踊る 第十六話

SIDE 陸斗

さて、ようやく奈良に到着か。電車の中じゃ寝てたからあっという間だったけど。
それじゃ桜咲に電話すっか。



炎は麻帆良の地に踊る  第十六話



トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル


『───もしもし、桜咲です』

「もしもし、楠だが」

『あ、はい。着きましたか?』

「ああ、今丁度ホームから出たところだ。今からそっちに向かう」

『その事なんですが、今そっちに楓が迎えに行きます』

「長瀬が?」

なんであいつが迎えに来るんだ?

『朝の電話を聞いていたらしくて。奈良公園では合流しない事を伝えたら、なら自分が迎えに行くと言い出しまして』

「いや、でもあいつも友達と一緒だろ?なんでまた……」

『さ、さぁ。ただ陸斗さんが迎えも無く一人では可哀想だとか、散歩部の校外活動だとか言ってましたが……』

なんだそりゃ?意味がわからん。今の俺は部外者なんだからそんな気を使わんでもいいんだが。

「まぁ分かった。長瀬にはこっちから電話しておく。そっちはそのまま護衛を続けててくれ」

『分かりました。では旅館で合流しましょう』

「ああ、また後で電話する」

ピッ

よし、それじゃ今度は長瀬に電話だ。


トゥルルル、トゥルルル、トゥルルル


『───もしもし、陸斗殿でござるか?』

「ああ、そうだ。今桜咲から聞いたんだが、こっちに来るって?」

『そうでござる。今どこにいるでござるか?』

「いや、お前も折角の修学旅行なんだから、俺に気を遣う事なんか無いんだぞ?」

『いやいや、陸斗殿にはいつも世話になってるでござるし、……それに拙者も一緒に回るのは嬉しいでござるし』

ん?最後は良く聞こえなかったぞ?

「なんだ、長瀬?最後がよく聞こえなかった」

『な、なんでもないでござる!そ、それで、今どこでござるか?』

「あ、ああ。今奈良駅に着いた所だが……」

『分かったでござる!今から行くでござるよ!』

「あ、おい、ちょっと待───」

プーッ、プーッ、プーッ

もう切れてやがる。何慌ててるんだ?あいつは……。
まぁ仕方ない。取り合えず公園側の出口に行っておくか。


で、待つ事数分。遠くからでも分かるくらいのスピードで走ってきた長瀬と合流した。

「で、これからどうすんだ?俺の方は公園内にいればどこでもいいんだが」

「では、先ほど見つけた甘味処に行くでござる。実はそこの団子が気になってしまって」

成る程。団子好きのこいつらしい。

「それじゃそこへ行くか。俺も喉が渇いたしな」

「了解。こっちでござる」

長瀬の案内について、甘味処に向かった。


「ここでござる」

そして着いた所はかなり落ち着いた雰囲気の、いかにも老舗って感じの店だった。

「ほう。かなりいい雰囲気だな。落ち着いていて」

「そうでござろう?拙者も今日見つけた時から気になっていたでござる」

「そうか。んじゃ早速入るかね」

店に入ると、中もいい感じで落ち着いていて、気持ちが安らいだ。

「おお、中もいい感じだな」

「そうでござるな〜」

「いらっしゃいませ〜。お二人ですか?」

「あ、はい」

「ではこちらへどうぞ〜」

やけに間延びした声の店員さんに案内してもらって席に着こうとした時、

「陸斗さん?……と楓か?」

聞き覚えのある声に呼び止められた。
声に振り返ると、そこには餡蜜を食べている真名ちゃんがいた。

「あれ、真名ちゃん?奇遇だな」

「真名?どうしてこんな所に………」

「陸斗さん。刹那に呼ばれたのかい?」

「ああ、正確には今朝、学園長からな」

真名ちゃんなら事情を知ってるから楽だな。

「あの〜、お知り合いですか?」

おっと、店員さんが困ってるな。

「あ、はい。真名ちゃん、相席、いいかい?」

「ああ、構わないよ。それに色々聞きたいこともあるし」

聞きたいこと?まぁそれは席に着いてからでいいか。

「じゃ、俺たちはここで。ああ、それからお茶とみたらし団子を二人分お願いします」

「はい〜、分かりました〜」

そう言って店員さんが奥へ引っ込んでいった。

「それで、何で楓が陸斗さんと一緒にいるんだい?」

早速真名ちゃんが切り出してきた。

「俺を迎えに来てくれたんだよ。いいって言ったんだがな」

「何、陸斗殿には普段から世話になってるでござるから」

楓は少し照れたように笑っていた。

「………………」

そんな楓を真名ちゃんがじっと見つめている。

「どした?真名ちゃん」

「いや、なんでもないさ。………まさか楓もか。同じ部活だし、油断は出来んな

?なんか小声でブツブツ言ってるが、大丈夫か?

「お待たせしました〜。みたらし団子、二人前です〜」

「お、来た来た。ほれ長瀬。迎えに来てくれた礼にこれは奢るぞ」

「なっ!?」

なんでそこで真名ちゃんが驚くんだ?

「……いいのでござるか?」

「ああ。但し、追加は自分で払えよ。そこまでは奢らん」

「……有難うでござる。頂くでござるよ」

嬉しそうに団子を頬張る長瀬を、真名ちゃんがまるで親の敵を見るように睨んでいる。
なんだ?そんなに長瀬だけ奢ったのが気に入らなかったのか?

「あ〜と、真名ちゃんのその餡蜜も俺が出そう。相席にしてもらったし」

「っ!そ、そうかい?悪いね」

途端に真名ちゃんも笑顔になる。やっぱり奢りだと美味いんだろうなぁ。
まぁ実際に俺の懐が痛むわけではないし、これ位はいいだろう。

「さて、別に俺はここで駄弁ってても構わないんだが、二人はどうすんだ?」

「拙者は陸斗殿に付き合うでござるよ」

「私もここでゆっくりするつもりだったから」

おいおい、二人とも、班の友達とかはいいんかい?なんて思ってると、

「おや、珍しい人に会いましたなぁ。お久しゅう、陸斗はん」

声をかけられた。其方へ視線を向けると、十人中十人は(男女問わず)振り返るであろう
袴姿の美人さんがいた。

「………なんであんたがこんな所にいるんだ?」

俺に声をかけてきた女性の名前は青山鶴子。昔、俺が修行と称して仕事をしながら
色々な所を回っていた時に知り合ったのだが……。

「陸斗さん、こちらは?」

「ああ、こいつは青山鶴子。神鳴流の剣士で、昔ちょっとな」

「こいつ、やなんてつれない………。うちと陸斗はんの仲やないどすか」

「「なっ!?」」

「何が俺とお前の仲なんだ?いい加減な事言うな」

「そんな………。あの夜だってあんなに激しく………」

「ぶっ!」

「「あの夜!?激しく!?」」

と、突然何を言い出すんだ、こいつは。

「そんな誤解されるような言い方をするな!」

「陸斗さん、一体どういう事だい?」

「拙者も是非聞きたいでござるなぁ」

ほら、言わんこっちゃない。完全に誤解してるぞ、こいつら。
つーか殺気すら感じるんだけど。なんでこんなに怒ってんだ?

「ふ、二人とも、とりあえず落ち着け。なんで怒ってんのか知らんが、俺とこいつはそんな関係じゃない」

一刻も早く誤解を解かないとえらい目に遭いそうだ。

「こいつとは、そうだな。簡単に言えば”殺しあった”仲だ」

「「っ!!」」

俺の言葉を聞いた途端、二人が鶴子に対して臨戦態勢をとる。
一方の鶴子はそんな二人を全く気にせず、いつの間にか俺の隣に座って注文した団子を頬張っている。
こいつ、完全に俺に二人を止めさせるつもりでいやがる。
こいつならこの二人くらい余裕であしらえるくせに、面倒ごとは全部こっち任せかよ。

「二人とも、落ち着け。こんなところで得物を出すな」

「陸斗はんが物騒なこと言うのが悪いんとちゃいます?」

「自分は全然悪くありません、みたいな顔してんじゃねぇ!元はといえばお前が悪いんだろうが!」

「はて、何のことやら」

すっとぼけやがって、こいつ。
兎に角今は二人をなんとかせんと。

「取り合えず二人とも座れ。こいつと殺りあったのは昔の話だ。今はたまに一緒に仕事をするくらいだな」

「それじゃあさっき言ってたのは………」

「どうせその時のことだろう」

確かにあの時は激しく殺りあったが。
兎も角、ようやく二人とも落ち着いたのか、大人しく席に座ってくれた。

「はぁ、なんで俺がこんなわけわからん苦労をしなくちゃならんのだ」

「ほほほ、陸斗はんもまだまだ修行が足りんちゅうことですなぁ」

ぐっ、こいつのこの笑いを見てると無性に腹が立ってくるぞ、ちくしょう。
大体なんの修行だっての。

「もういい、なんかどっと疲れた。今日はもう宿に行って休もう」

「「えっ、もう(でござるか)!?」」

「な、なんだよ。俺は宿に行っちゃいかんのか?」

「そ、そういうわけじゃないが……」

「折角一緒に奈良公園を回れると思ったでござるのに……」

「あのな、折角の修学旅行で俺と回ってどうする。大体お前ら、そろそろ集合しなくてもいいのか?もう結構な時間だぞ」

外を見ると空が僅かだが赤くなり始めている。

「くっ、仕方ないか」

「そうでござるな……」

やはり二人とも集合時間まであまり時間が無いようだ。

「それじゃ二人とも気をつけてな」

「陸斗さんも。また明日」

「ご馳走様でござる」

そう言って二人が席を立った。
そして二人がいなくなったのを確認してから、俺は未だに此処にいる鶴子に話しかける。

「で、お前が此処にいるのも偶然じゃないんだろ?」

「あら、バレてましたか」

「当たり前だ。今までお前がなんの用も無しに俺の前に現れたことが一度でもあったか?」

こいつはいつも厄介ごとを持ち込んできやがるからな。

「まぁまぁ、そないに邪険にせんと。今回はうちが直接関わってるわけじゃないんどすから」

「どういうことだ?」

「陸斗はんがこちらに来たのは呪術協会の長の娘さんの件ですよね?」

「………そうだが」

一瞬言っていいものか迷ったが、こいつには隠し事は無意味だと判断し、肯定した。

「そのことなんどすけど、実はお嬢さんを襲った一味に神鳴流の剣士が一人いるんですわ」

「何?」

それは初耳だぞ。

「それで、お前が出張るのか?」

「いえ、うちは、というより神鳴流は手出ししまへん。いや、出来ないと言った方がええどすな」

「なんだと。どういうことだ?」

「実はここ数日、神鳴流に退魔の依頼が日本各地から来てまして、その対応におおわらわなんどす」

「日本各地からだと?東からの依頼もか?」

「そうどす。うちは今日までここで出稽古があったんどすが、明日から新潟の方へ行く事になってます」

妙だな。通常、退魔の依頼は西は神鳴流、東は神凪っつーのが暗黙の了解になってる筈なんだが。

「………今回の一件、神鳴流の上の方の連中も絡んでるってことか」

「そういうことになりますな」

確か今の呪術協会の長は神鳴流出身らしいから、その辺の絡みもあるんだろうか。
いずれにせよ、厄介なことには違いないか。

「分かった。情報感謝する」

そう言って席を立つ。さっさと旅館に行って桜咲たちと今後のことについて打ち合わせしないとな。

「そうそう、陸斗はん」

「なんだ?」

「今回の情報料はここの御代でお願いします」

嫌味なほど清々しい笑みでそんな事を言ってきやがった。

「やれやれ、抜け目がないな。いいぜ、払っといてやる」

「おおきに〜」

会計で鶴子の分も支払い、店を出る。
さて、それじゃいい加減時間も経ってるし、さっさと旅館へ行くとしますか。


posted by 焼き饅頭 at 00:37| Comment(1) | TrackBack(0) | 炎は麻帆良の地に踊る | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 どうも、口移しにメルヘンください、ノッティーです。
 最新話本当に待ちくたびれましたよwでもでも私はこの作品が好きなので見捨てたりしませんよ!w私がここの作品を読まなくなるのはss全般に飽きたときでしょう。
 さて、最新話読みました。真名は楓を完全に敵と認識しましたね。後鶴子も出てきましたが、この人はヒロインとなり得るのか微妙なトコですね〜。京都編だから絡ませるコトができましたが、その後は結構難しそうですしね。素子の方は今何やってるんでしょうね。絡ませる予定ありというコトは受験生もしくは大学生といったところでしょうか。
 それでアキラと絡ませたらと言うことですが、確かに似てますよねw出会った瞬間何か感じる所があるのかも・・・。
 
 今週の君らじは梢のひとり大喜利が最終回と言うコトで、緊急特別枠が全部使われたんですが、大喜利やってる時のコズは微妙にいいねw今までのコズは私的には、若干イラってくるキャラでラジオ内でも人の話には乗るだけみたいな感じだったんですが、大喜利の時は二人しかいないので、言わざるおえない状況だったと言うのがコズを良く見せたのではないかなと思うわけです。後は130回目の時の智秋ですね。あれ調子乗りすぎ。久しぶりに智秋にイラっときました。家族話はたくさんしてほしいですけどねwタダオ話も期待してるんだけどな・・・。
 
 っと長くなってしまいました。今回はこの辺で。マタニティー!!!
Posted by ノッティー at 2007年10月01日 01:23
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